【弁護士監修】無給の長期インターンは違法?未払い請求とトラブル回避の方法を解説

長期インターン 無給 違法

長期インターンを実施する企業の中には、『長期インターン』という枠組みを利用して無給でタダ働きを求め、学生の貴重な時間をやりがい搾取する悪質な企業が隠れています。

企業の指揮命令下で学生を働かせる場合、労働基準法などの労働法令を遵守しなければなりません。無給の長期インターンは、労働基準法違反に当たる可能性があります。

本記事では、長期インターンの無給に関する違法性や、未払い給料の請求方法、トラブル回避のために学生側が留意すべきポイントなどをまとめました。長期インターンが無給であることに疑問を持っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修者
阿部 由羅|弁護士(ゆら総合法律事務所) 阿部 由羅|弁護士(ゆら総合法律事務所
ゆら総合法律事務所の代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

無給の長期インターンは違法?

長期インターンとは、おもに開催期間1ヶ月以上のインターンのことで、実務経験を積むことを目的に、企業の業務に従事する中長期間のプログラムです。

まずは、長期インターン生を無給で働かせることの違法性について解説します。

労働時間に該当する場合、無給は違法

長期インターンに参加している時間が「労働時間」に該当する場合、無給は違法になります

労働時間とは、企業の指示命令下で仕事を行っている時間をいいます。

例えば、営業活動のフォローや商品・サービスを作る手伝いなどの活動は、企業の指揮命令下で業務を行っているものとして、労働時間に当たると考えられます。

一方、業務の見学や会社の説明を受けるなど、専らインターン生の学習を目的としている活動は、労働時間に該当しないことが多いです。

多くの長期インターンでは、インターン生は社員とほぼ同様の仕事を行うため、その活動時間の大半が労働時間に当たると考えられます。そのため、無給での長期インターンは違法になる可能性の方が高いです。

プログラムを事前に確認し、労働時間に該当する内容かどうかをチェックしておきましょう。

労働に該当するための条件

長期インターンの活動が労働時間に該当するかどうかは、一例として以下の要素などから総合的に判断されます。

  • ①実務への関与:見学や研修ではなく、社員同様の実務に取り組んでいること
  • ②利益への貢献:学生の実務が企業の売上や利益に直接繋がっていること
  • ③指示・管理:企業から具体的な指示を受け、仕事の進め方や時間などが管理されていること
  • ④継続性:一定期間を超えて継続的に働いていること
  • ⑤報酬性:社会通念上、給料を支払うべき労働に当たるような内容であること

上記の各要素を総合的に考慮した上で、長期インターンの活動が労働時間に該当する場合には、企業は学生に対して最低賃金以上の給料を支払う義務が生じます。

参加中の長期インターンが労働時間に当たると思われる場合には、適切な給料の支払いを求めましょう。

無給の短期インターンは違法ではない?

短期インターンとは、おもに開催期間1日〜数週間程度のインターンのことで、会社理解を深めることを目的に、企業説明会やワークショップ、社員座談会などを行う就活生向けのプログラムです。

続いては、短期インターンを無給とすることの違法性について解説します。

労働に該当しない場合は、無給でもOK

短期インターンのプログラムが、労働ではなく学習の機会を目的としている場合は、無給でも問題ないと判断されるケースが多いです

多くの短期インターンは、1日~2週間程度の期間で行われ、学生が実務を行うことはほとんどありません。実務の代わりに、職場見学や仕事体験、会社説明会、座談会などが行われるケースが大半です。

短期インターンは、学生が業界や企業について学ぶための機会であり、企業の指揮命令下で働いているとは評価しにくい部分があります。

そのため、短期インターンの活動は労働時間に当たらず、給料は発生しないと判断される可能性が高いでしょう。

短期インターンでも労働にあたる場合はある

短期インターンでも、実際の業務を行う場合は労働時間とみなされ、無給では違法になる場合があります。

たとえば以下のような活動を行う場合は、短期インターンでも給料を支払うべきと判断される可能性が高くなります。

【具体例】
・営業部で実際に顧客への電話対応を任される
・企画部で新商品のアイデアを考案し、採用・商品化される
・デザイン部門で実際の広告制作に携わる

典型的な短期インターンの目的は職場見学や仕事体験であり、学生が実務を行うことを想定していません。しかし、実務や売上への貢献が見られる場合、企業は学生に対して適切な給料を支払う必要があります。

短期インターンではレアケースであるものの、無給でありながら労働力として扱われてしまうケースもあるので、注意が必要です。

違法の可能性が高い長期インターンの特徴

違法の可能性が高い長期インターンの求人には、下記のような特徴があります。

  • 無給とされている
  • 最低賃金を下回る時給になっている
  • 日給制でも時間換算すると最低賃金を下回る

長期インターンを有意義な機会にするためには、違法の可能性が高い長期インターンをそもそもの選択肢から外しておくことが重要です。

無給とされている

長期インターンが無給とされている場合は、注意が必要です

長期インターンでは、数ヶ月にわたって継続的に社員同様の実務を行うため、学生でも労働者として扱うべきと考えられます。そのため、企業は学生に最低賃金以上の給与を支払う義務が発生し、無給は違法扱いになります。

ただし、グループワークなどの労働ではないプログラムの場合、無給であっても違法にはならない可能性があります。

長期インターンで得られる経験を過剰に重視して、無給での労働を受け入れるのは避けるべきです。長期インターン先を検討する際は、適切な給与を提供する企業を選ぶことが重要です。

最低賃金を下回る時給になっている

労働にあたるプログラムにもかかわらず、最低賃金を下回る時給設定の場合は、違法な長期インターンの可能性が高いです

最低賃金法により、企業は最低賃金額以上の給料を労働者に支払わなければなりません。

仮に学生と企業が最低賃金未満で合意したとしても、合意した金額ではなく最低賃金額が適用されます。長期インターン生にも労働者として正当な賃金を受ける権利がありますので、求人票に目を通す際は時給額もしっかり確認しましょう。

日給制でも時間換算すると最低賃金を下回る

日給額を時間換算にした場合の金額が、最低賃金を下回る場合も注意が必要です

例えば、8時間働いて7,000円の日給なら、時給は875円です。この時給金額875円が各都道府県の定める最低賃金を下回っていたら、違法インターンの可能性が高いです。

各都道府県の地域別最低賃金は、厚生労働省のウェブサイト上で確認できます。(参考:地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省

日給制の長期インターンを検討する場合、日給を労働時間で割って、地域別最低賃金以上であることを事前に確認しましょう。

無給で長期インターンをした場合、給料の支払いを請求できる

労働に当たる長期インターンへ参加したにもかかわらず、無給扱いだった場合は、後日企業に未払い給料の支払いを請求できます。

ここからは、未払い給料の計算方法、請求手続き、請求に関する相談先などを紹介します。

①給料は最低賃金で計算する

労働に当たる長期インターンで給料の定めが無い場合、労働基準法および最低賃金法に基づいて最低賃金が適用されます。

最低賃金には「①地域別最低賃金」「②特定最低賃金」の2種類があり、金額が高い方が適用されます。

  • ①地域別最低賃金:各都道府県で労働する全ての労働者が対象
  • ②特定最低賃金:各都道府県で労働する人のうち、特定の業種に従事する労働者が対象

例えば、東京都の鉄鋼業を営む企業で長期インターンに参加した場合、地域別最低賃金は1,163円(2024年10月~)、特定最低賃金は871円です。

この場合、適用される最低賃金は、1,163円です。仮にこの企業で長期インターン生として合計100時間の労働を行った場合、11万6,300円(=1,163円×100時間)の給料を請求できます。

②残業代も請求できる

長期インターンであっても、企業の指示に基づき所定労働時間外に仕事を行った場合は残業代が発生します

なお、法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を越えた残業には、割増賃金が適用されます。

レアケースですが、休日に出社を指示された場合や深夜残業を行った場合も割増賃金を請求できます。

【割増賃金率】
・時間外労働(法定労働時間を超える労働)/25%(月60時間を超える部分は50%)
・休日労働(法定休日の労働)/35%
・深夜労働(22時~5時に行われる労働)/25%

③未払い給料請求の手続き

長期インターン先に未払い給料を請求する場合、主に以下の手続きを行います。

手順1
協議

インターン先との間で話し合いの場を設け、未払いの給料額や支払方法を合意します。

未払いの給料額を正確に計算するために、根拠となる資料(タイムカードや勤怠管理システムの記録、シフト表など)を確保し、インターン先に対して提示しましょう。

手順2
労働審判

協議がまとまらない場合、地方裁判所に対して労働審判の申立てを行います。

原則として3回までの審理で調停を試み、結論が出ない場合は労働審判により解決が示されるため、迅速な解決が期待できます。

手順3
訴訟

労働審判に対して2週間以内に当事者が異議を申し立てた場合には、訴訟手続きに移行します。また、労働審判を経ずに訴訟を提起することもできます。

訴訟では、インターン生側が未払い給料請求権の存在を主張・立証し、裁判所に対して未払い給料の支払いを命ずる判決を求めます。

④未払い給料の請求相談先

長期インターンの給料が未払いとなっている場合は、弁護士または労働基準監督署に相談しましょう

未払い給料の請求に当たっては、労働基準法のルールや判例などを踏まえて、適切な主張・立証を行うことが重要です。そのためには、弁護士のサポートが役立ちます。

また、労働基準監督署に対して給料の未払いを申告すれば、会社に対して是正勧告などを行ってもらえることがあります。是正勧告がなされれば、その内容に従って未払い給料が支払われる可能性が高いです。

専門的な知識・経験を持つ弁護士や労働基準監督署のサポートを活用し、トラブル解決に向けて行動しましょう。

▼労働基準監督署の公式ページ

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/kantoku.html

長期インターンの無給トラブルを事前に防ぐ方法

長期インターンの無給トラブルを回避する方法をまとめました。

  • 求人サイトの給与欄を確認する
  • 雇用契約書を確認する
  • 事前に企業の評判を調べておく
  • 違和感を感じたら退職する

それぞれ解説します。

求人サイトの給与欄を確認する

長期インターンの求人票に目を通す際は、必ず給与欄を確認しましょう

基本的には、「時給1,100円」「月給10万円」と明確に書かれている企業に絞ってインターン先を選びましょう。「無給」や「報酬なし」「応相談」と書かれている場合は注意が必要です。

また、交通費や昼食支給をアピールし、肝心の給与額を濁しているケースもあります。待遇条件ばかりに気を取られることがないよう、注意してください。

給与に関する情報が不足している、または全く記載がない場合は、企業に直接問い合わせることをおすすめします。自分の権利を守るためにも、給与に関する情報を確実に収集してから申し込むことが重要です。

雇用契約書を確認する

求人票だけでなく、雇用契約書を確認することも大切です

雇用契約書とは、雇用主と労働者が締結する労働契約の条件をまとめた書類です。企業と労働者の双方が契約内容に合意し、署名捺印を行うことで契約が締結されます。

長期インターン開始前に、雇用契約書を渡されますので、自分に不利益な内容が含まれていないかどうかチェックしましょう。

【主なチェックポイント】
・給与の金額や支払い方法
・労働時間と休日
・仕事の内容
・インターンの期間

雇用契約書を読み進める中で、不明な点や疑問があれば必ず企業担当者に確認しましょう。親やキャリアセンターに相談して、一緒に確認してもらうこともおすすめです。

また、雇用契約書の内容に納得できない場合は、サインをする前に変更を求めて交渉しましょう。雇用契約書の内容をしっかり理解・納得した上で締結することが、自分の権利を守ることに繋がります。

事前に企業の評判を調べておく

インターン先を選ぶ際には、その企業が過去に開催されたインターンの評判・クチコミを調べておくべきです

長期インターンのまとめサイトを見てみる、元インターン生のSNSを探してみるなど、トラブル事例がないかリサーチしておきましょう。

評判の悪い企業や、情報が極端に少ない企業は要注意です。求人票に目を通す際は、給料や労働条件に不利益な内容がないか丁寧に確認しましょう。

第三者の情報も参考にしながら、適正な条件で参加できる長期インターンを選びましょう。

違和感を感じたら退職する

「約束した給与が支払われない……」「無給なのに正社員と同じような仕事を任される……」といった違和感を感じたら、勇気を持って退職しましょう。

自分だけで抱え込まず、親やキャリアセンターにも相談しながら、インターンを継続するかどうかを検討してください。

まとめ

最後に本記事をまとめます。

  • 「労働時間」に該当する長期インターンの場合、無給扱いは違法。
  • 無給の長期インターンに参加した場合、未払いの給料を請求できる可能性が高い。
  • 未払い給料を請求したい場合は、弁護士や労働基準監督署に相談してアドバイスを受ける。
  • 無給トラブルは事前の確認で防げることが多い。
  • 求人票や雇用契約書を親やキャリアセンターにも見てもらい、複数の目でチェックすることが重要。

お金を得ながら、ビジネススキルを身につけられる長期インターンは、本来参加価値の高い活動です。健全な職場環境で積んだ経験を将来のキャリア形成に活かせるよう、今回の記事を参考に無給トラブルを回避してください。

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参考文献

厚生労働省 インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方
令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります
地域別最低賃金の全国一覧
採用選考に関するアンケート
労働法制の動向
雇用均等基本調査若年者雇用に関する参考資料
文部科学省 大学等におけるインターンシップの推進
経済産業省 インターンシップ推進
インターンシップ活用ガイド
ジョブカフェ
内閣府 働き方の変化と経済・国民生活への影響
総務省
総務省統計局
労働力調査(基本集計)
雇用者(正規・非正規の職員・従業員の動向など)
独立行政法人労働政策研究・研修機構 就労等に関する若者の意識
入職初期のキャリア形成と世代間コミュニケーションに関する調査